**近代性と中世ロマンスの狭間で。それが、揺れ動く一人の女性を通じてハーディが描いた時代の肖像である。**
---
1880年から81年にかけて『ハーパーズ・ニュー・マンスリー・マガジン』に連載された、トマス・ハーディの8作目の長編小説『ラオディキアの人:あるいは、デ・スタンシー家の城。現代の物語』。偽造電報や捏造写真といった、ハーディの他作品にはあまり見られない仕掛けを持つこの作品は、単なる恋愛小説ではない。
中世の城を舞台にした物語の下に、19世紀イギリスの時代精神を映し出す深い鏡がある。相続、建築、階級、そして愛情──ハーディは一人の女性相続人を通じて、進歩と過去への憧憬という二つの引力の間で引き裂かれる人間の姿を鮮やかに描き出した。近代を象徴する建築家と、没落貴族の魅力を体現する男、その狭間でヒロインはどちらも完全には選べない。その逡巡こそが、本作を単なる三角関係の物語の枠から解き放っている。
---
二つの世界の間に立つ、一人の女性相続人
**ポーラ・パワー**は、実業家であった父から中世の城を相続した。その城は、かつて貴族**デ・スタンシー家**から買い取ったものだった。
彼女は二人の建築家に心を寄せる。ロンドンから来た若き建築家**ジョージ・サマセット**が「近代性」を象徴する一方で、没落貴族の末裔**デ・スタンシー大尉**は「中世貴族の魅力」を体現する存在となる。
そこに、大尉の非嫡出子**ウィリアム・デア**による陰謀が絡む。彼は電報と写真を偽造し、サマセットを陥れようと画策するが、大尉の妹**シャーロット**によってその策略は暴かれる。復讐に燃えたデアは、ついに城そのものを焼き払う。
---
タイトルに込められた、最後の一行
物語の結びは、こう記される。
「あのお城が焼けなければよかったのに。そして、あなたがデ・スタンシー家の人だったらよかったのに\!」 ―― ポーラ・パワー、『ラオディキアの人』
この一行が、近代性とロマン主義的な中世主義──そしてそれを体現する二人の男性──の間で揺れ動くポーラの二面性を捉えている。同時に「ラオディキアの人」というタイトルが意味する「どっちつかずで、熱意のない者」という主題を、静かに強調している。
---
*進歩と憧憬のどちらも手放せないとき、* *「何を選ぶか」という問いが、静かに浮かび上がる。*