良き料理の書

良き料理の書

著 ミヒャエル・デ・レオーネ

**蚊の足とカエルの喉元を材料に挙げた「レシピ」が、700年前の料理書に載っている。** **それが、ドイツ語圏最古の料理書が隠し持つ、最も意外な顔である。**

---

14世紀半ば、ヴュルツブルクで編まれた大部の集成写本の中に、一冊の料理書が収められた。中高ドイツ語で「buoch von guoter spîse」と呼ばれる『良き料理の書』──ドイツ語圏に現存する最古の料理書であり、中世食文化を知るうえで最も重要な史料の一つである。101のレシピからなるこの書は、現在**ミュンヘン大学図書館**に所蔵されている。

韻文の序文はこう告げる──未熟な料理人を助け、料理の技を教えるための書であると。しかし実際には、多くのレシピがアーモンドミルクの作り方や生地の準備をすでに知っていることを前提としている。本書が向けられていたのは、初心者よりも熟練した厨房の責任者だったと考えるのが自然である。

---

宮廷の食卓が映す、富と権力の美学

レシピが映し出すのは、都市上層階級と貴族の食文化である。サフラン、コショウ、クローブ、ガランガル──東方から輸入された高価な香辛料が随所に登場し、キジ、鹿、ヤマウズラといった狩猟鳥獣の料理がその豊かさを物語る。

特に重要なのが「**ブラン・マンジェ**」と呼ばれる白い料理である。アーモンドミルク、米、鶏肉から作られるこの料理は、繊細で上品、消化しやすいと考えられ、中世に広く愛された。甘味と塩味が組み合わされた当時の味覚は、現代の食習慣から見れば奇異に映ることも少なくない。

見せ場料理もまた印象的である。装飾された子牛の頭を肉とリンゴの層の上に置くといった演出は、満腹にすることよりも祝宴での見栄えを優先したもの──主人の富と文化的教養を示すための、食卓の芸術だった。

---

笑いも、中世の料理書の仕事だった

しかしこの書には、もう一つの顔がある。蚊の足やカエルの喉元をありえない材料として挙げた、二つの滑稽な「レシピ」が収められているのだ。こうしたパロディは、中世の料理文献が教えるだけでなく、楽しませることをも目的としていたことを示している。

本書の影響は後世にも及んだ。15世紀には多くのレシピを採用・改作した「**モントゼー料理書**」「**ウィーン料理書**」などの写本が生まれ、その内容は形を変えながら受け継がれていった。

---

*台所と宮廷と社会的地位が一枚の皿の上で交わるとき、* *「食べるとはどういうことか」という問いが、700年の時を越えて静かに浮かび上がる。*

出版社
BookAI
発行日
2026-05-22

Miva、オーディオブックの次に来る読書体験

オーディオブックのように聞いて、気になることは自由に質問できる

Mivaの語りを聞く

Mivaは読み上げるだけでなく、質問に応じて説明を続けてくれる。